上品な甘みと旨味が特徴で、料亭などで食べる高級魚として知られる「甘鯛」。名前は聞いたことがあっても、どんな魚なのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか。この記事では甘鯛の種類や特徴、旬の時期やおいしい甘鯛の選び方に加え、おすすめの食べ方について解説します。ぜひ最後までご覧くださいね。
甘鯛の旬の時期はいつ?おいしい甘鯛の選び方や食べ方を解説!
- 目次
- 甘鯛とは?
- 赤甘鯛
- 白甘鯛
- 黄甘鯛
- 甘鯛の名前の由来
- 甘鯛の生態や旬は?
- 甘鯛の選び方とおすすめの食べ方
- おいしい甘鯛の選び方
甘鯛とは?
甘鯛とはスズキ目アマダイ科の海水魚です。鯛という文字が入っていますが、タイ科ではなくアマダイ科に属しています。いわゆる「あやかり鯛」のひとつです。アマダイは細長く平たい側扁形をしていて、頭部が大きい愛らしいフォルムが特徴。額が出っ張っていて四角い顔つきをしています。種類によって差はありますが彩りが美しいのも特徴で、背ビレからお腹にかけて赤から銀白色のグラデーションがありとても華やかです。眼の下が黄色く、ヒレの一部は鮮やかな青色になっていて高級感があります。甘鯛の身は半透明の白身でやわらかく淡白な味わいの中に鯛のようなほのかな甘みと旨味があります。ほどよく脂がのった甘鯛は上品な味わいで、高級魚として料亭などで扱われているのも納得のおいしさですよ。
アマダイ科の魚は世界中で3属28種見つかっていますが、そのうち日本近海で穫れるものは1属5種です。アカアマダイとシロアマダイ、キアマダイとスミツキアマダイ、ハナアマダイの5種類ですが、市場に出回るのはアカアマダイ、シロアマダイ、キアマダイでそのほかの種類を見かけることはほとんどありません。ここでは日本で流通している3種類について見ていきましょう。
赤甘鯛
「赤あま」とも呼ばれる赤甘鯛は、3種類の中で最も赤みが強く額の出っ張りが目立つ甘鯛のこと。水深30~140mほどの砂泥地が生息域です。流通量が最も多く、「若狭グジ」として京都で珍重されています。目の下に鮮やかな黄色の差し色が入っているのと、ヒレの一部がコバルトブルーになっているのが特徴です。また、目の斜め下に白い逆三角形の模様があります。全長45cmほど、重さは1~2kgほどです。オスの成魚は最大で60cmほどになることもあります。
白甘鯛
白甘鯛は「シラカワ」と呼ばれ、ほかの甘鯛と比べて色が白っぽいのが特徴です。水深30~100m浅い砂泥地に生息しています。体表は淡紅色で尾ビレには黄色い帯があるのが特徴です。甘鯛のなかでも脂がのっていて味がよく、身に弾力があることから最高級品として扱われています。
黄甘鯛
赤甘鯛や白甘鯛と比べて流通量が少ないのが黄甘鯛です。生息域は水深30~300mの砂泥地で、3種類の中で最も深い場所に生息しています。姿や大きさは赤甘鯛と似ていますが、顔や尾ビレなどがやや黄色がかっています。また、目の下から上あごにかけてまっすぐ銀白色のラインが入っているところからも見分けることができるでしょう。黄甘鯛の身は脂肪分が少なくてやや水っぽいため、干物などに加工されることが多いです。
甘鯛の名前の由来
甘鯛という名前の由来は諸説ありますが、有名なのは鯛のように甘みがあることから名付けられたという説です。また、漢字で「尼鯛」と書かれることもあり、これは横から見た顔つきが尼僧に似ているからだと言われています。そのほかにも甘鯛は地域によってさまざまな名前がつけられており、古代にはユニークな形から「屈頭魚(くずな)」と呼ばれていました。関西ではくずながなまって「クジ」や「グジ」と呼ばれています。とくに福井県の若狭で穫れるものは「若狭グジ」と呼ばれて有名です。静岡では徳川家康に興津という局が甘鯛を献上したことから興津鯛と呼ばれるようになったという逸話もあります。さらに、高知県では「ビタ」と呼ばれており、これは使い物にならないという意味の鐚(びた)を由来とするようです。山口では頭部が大きいことを「馬頭魚」に例えた「バトウ」、島根では鯛と呼ばれているのに鯛ほど大きくはないことを指して「コビル」などと呼ばれています。
同じ魚なのにこれほど多くの呼び名があるというのもおもしろいですね。
甘鯛の生態や旬は?
甘鯛の日本近海での生息域は青森より南の日本海や千葉県より南の太平洋沿岸、さらには朝鮮半島の南部や中国、台湾などです。
生息しているのは水深は30~200mあたりのやや深い海の海底です。水深は種類によって異なり、赤甘鯛は水深30~140m、白甘鯛は水深30~100m、黄甘鯛は水深30~300mを好みます。どの種類も砂泥底に巣穴を堀ってその中に潜み、周辺を通るカニやシャコ、エビといった甲殻類や、ゴカイなどの多毛類をエサとします。巣穴そのものは単独で作りますが、集団で固まって生息しています。縄張り意識が強く、巣穴に近づいてくる生き物には体当たりで攻撃するなど気性の荒い一面もあるようです。産卵の時期は9~12月ごろで、巣穴から離れた水深70mほどの海底で行われます。
甘鯛は年間を通して漁獲されており市場に流通していますが、最も多く出回る時期は8~12月頃と言われています。味がよい旬の時期は諸説ありますが、若狭グジで有名な福井県をはじめ山陰から北陸にかけては夏が旬とされているようです。産卵期が9~12月なので、産卵に備えて栄養をたっぷりと蓄える夏から秋にかけてが最もおいしいと考えることができます。
甘鯛の選び方とおすすめの食べ方
続いてはおいしい甘鯛を選ぶポイントや、おすすめの食べ方についてご紹介します。
おいしい甘鯛の選び方
甘鯛は新鮮なものほど赤みが強く、鮮度が落ちると色合いが白っぽくなるのが特徴です。購入する際には、赤みが強く体の色につやがあるものを選びましょう。引き締まっていて目が澄んでいることもポイントです。また、体が小さいものは、脂ののりがあまりよくないと考えられるので、できるだけ大きな物を選ぶのがよいでしょう。
おすすめの食べ方
甘みが強く上品な旨味がある甘鯛は刺身や煮物、干物や揚げ物など、さまざまな調理法で食べることができます。新鮮なものが手に入ったらぜひ刺身で味わってみてください。繊細でやわらかな甘鯛の食感を楽しむことができます。薄造りにしておろしポン酢で食べたり、皮の方を直火で香ばしく炙って食べると絶品です!昆布締めにして数日寝かしたものを刺身にして食べるとさらにおいしいですよ。
甘鯛の定番の食べ方のひとつが干物です。甘鯛の身は水分が多くやわらかいですが、干すことで旨味成分が増し風味がさらによくなります。上品な甘みを堪能できますよ。また、甘鯛は普通の魚では取り除く鱗まで食べることができます。鱗をつけたまま焼く鱗焼きや、鱗ごと唐揚げにした松笠揚げはたいへん上品な味わい。パリパリとした鱗の食感がクセになりますよ。こっくり濃い味つけで煮た甘鯛の煮物もおすすめです。とろりとやわらかく深い旨味がやみつき必至のおいしさ!頭に湯をかけて椀種にしたり、ふっくらと酒蒸しにするのも絶品です。
甘鯛レシピをご紹介!
お刺身だけではなく、さまざまな調理方法で楽しめる甘鯛。最後にクリエイターのレシピをご紹介します!ぜひチェックしてくださいね。
甘鯛松笠焼 作り方
鱗付きでもおいしく食べられる、松ぼっくりに見立てた松笠焼き料理。皮つきのまま焼いて表面のうろこを松ぼっくりに見立てた料理甘鯛の作り方やポイントの解説付きです。ぜひ参考にしてみてくださいね。
さまざまな料理法でおいしく食べよう!
甘鯛の特徴や種類、生態や旬の時期に加え、選び方やおすすめの食べ方などを解説しました。高級料亭などで提供されるイメージの強い甘鯛は上品な甘みと旨味が特徴で、ほかにはないおいしさが味わえます。これまで甘鯛を使ったことがないという方もこの機会にぜひ甘鯛でさまざまな料理を楽しんでみるのはいかがでしょうか?