■保存期間
冷蔵4日
■紹介文
今回は、ローストビーフのレシピをご紹介します。
後半で肉の色や肉汁についてもご説明いたします。
私のレシピはフライパンを使い、焼いたかたまり肉を野菜とワインで作ったソースで煮るように焼きます。
ですので、生焼けの心配は無く、焼き過ぎることもなくソースの味と風味がしっかりと染み込みますよ。
ねかせるほど美味しくなりますので、前日に作っておけば肉の中で肉汁とソースの旨味がしっかり回り込み、とても立派なおもてなし料理になります。
連休のおうちごはんや大切な方のお誕生日、クリスマス、お正月などのハレの日に、ご活用くださいませ。
■材料(4人分)
牛もも肉かたまり 400~500g
■牛肉の下ごしらえ用
塩 小さじ1
こしょう 小さじ1
■油
オリーブオイル 大さじ1
■ソース
にんにく 1片
セロリ 5cm(10~15g)
玉ねぎ 1/4個
赤ワイン(白ワイン、日本酒でもOK) 50ml
水 150ml
ブイヨンスープの素(コンソメスープの素でもOK) 小さじ1/2
しょうゆ 大さじ1
■作り方
【0】牛肉は室温20度前後の場合、調理開始の2~3時間前ほど前に冷蔵庫から出して肉の芯まで温度を常温に戻しておきましょう。
冬場でキッチンが寒く10度以下の場合は、20度以上の暖かい部屋に置いて戻すことをおすすめします。
肉の芯が冷たいまま調理を始めると、表面は焼けているように見えても、中まで火が通らないためです。もし、1kg以上のかたまり肉を使われる場合は、前日から出しておくと良いでしょう。
私は、ローストビーフを作る時は、牛肉を買ってきたら冷蔵庫に入れず、常温に置いたまま、もう1件買い出しをしたり、掃除をしたり、出しっぱなしで別メニューの食事を用意していただいて片付けたりと、放置プレイです。これで、ちょうど良いくらいになります。
とにかく、牛肉は室温に放置しておいて……
【1】まず、ソースに使うにんにく、セロリ、たまねぎを、2mm厚さ程度の薄切りにします。
後の手順でソースをこしますが、みじん切りより、薄切りのほうが、雑味が出にくいです。薄切りでも、煮込みますので、香りがソースにしっかりと移ります。
これらは、後で使いますので、横に置いておきましょう。
【2】牛肉に塩とこしょうを全体的にまんべんなく、よくすりこみます。
ザラザラがなくなるまで(なくなりませんが)、それくらいの気持ちで、表面はもちろん、側面や角にも、しっかりとすりこみましょう。雑にすりこむと、こしょうが多く付いた箇所がロシアンルーレットのように激辛になってしまいます。
塩は、肉の旨味を閉じ込める働きがあります。肉の重量の1%がちょうど良いですので、4~5gがベストです。こぼれることも想定して6g=小さじ1を使用します。
こしょうが、とても多めの配分に思えるかもしれませんが、肉の臭みがしっかりと消えて、仕上がりは、ちょうど良い塩梅になります。しっかりと広げるようにすりこみましょう。
【3】厚手のフライパンを中火にかけ1分ほど空焼きします。
中火は、炎の先がフライパンの底にちょうど当たって、炎が折れ曲がらない程度です。
煙が出るまで加熱しなくても、「1分ほど空焼き」で構いません。特に、あまり厚手でないフライパンや、慣れていないフライパンを使う場合は、牛肉が張り付いてしまうことがあるためです。
【4】フライパンにオリーブオイルを入れてさっと全体に延ばします。
フライパンを持ち上げて回しても良いですし、キッチンペーパーを菜箸やトングでつかみながら、全体に延ばしても構いません。IHはフライパンを離すと加熱が止まる機種もありますから、手早く安全に出来るなら、どちらでも構いません。
フライパンを、ある程度温めてから油を入れるのは、少しでも油の酸化が少なくなるため、また、フライパンの余分な水分を飛ばすためです。油が温まった際の「ぱちぱち」としたハネがなくなり、また、雑味が減ります。
【5】牛肉を入れてまず側面を焼きます。
側面を焼くのです。「各面焼こう」とすると、焼いたつもりでも、意外と側面が焼けていないのです。
側面にしっかりと焼き色を付けることで、たこ糸を巻かなくても、ぺったんこではなく、きれいな厚めの形を保った仕上がりになります。
【6】側面にあたる部分から各面2分ずつ、すべての面を焼きましょう。
焼いている間は、動かさず放置して、じっくりと焼き付けましょう。上から押さえたりする必要もありません。
ひっくり返す際、今回は菜箸を使っていますが、ちょっとしんどいです。あればぜひトングを使いましょう。
【7】各面に焼き色が付いたら火を止め、牛肉をお皿に置いておきます。
お皿は食器棚から出した冷たいもので構いません。また、後でお皿を洗うのが面倒であれば、アルミホイルを敷いた上に置いても構いません。
この時点では、肝心の牛肉の表面に赤みが残っていますが、後の手順でソースと一緒に煮るように加熱しますので、問題ありません。
フライパンは洗わず、これから肉汁を活かしてソースを作ります。
【8】牛肉を取り出したフライパンに手順1の薄切り野菜を加え、弱火にかけ2~3分ほど炒めます。
弱火は、コンロとフライパンの半分くらいの間に炎の先がある程度です。
野菜を焦がさないように、しんなりとするまで、2~3分ほど炒めましょう。
【9】赤ワイン、水、ブイヨンスープの素、しょうゆを入れ中火にします。中火にし、しばらくして勢いよく全体が沸騰したら手順7の牛肉を加え、表面5分、ひっくり返して裏面5分ほど焼くような気持ちで、ふたはせず合計10分ほど煮ます。
「ローストビーフなのに、こんなに煮込んで大丈夫?」「生煮えがこわいので、8時間室温に戻したけど、この作り方だと中身まで煮えるのでは?」
大丈夫です。ローストビーフ用の分厚い肉は、しっかり室温に戻していても、焼き色をしっかり付けた後、さらに、10分程度浅いかさの煮汁で煮ただけでは、「じんわりと中までゆっくりと加熱されている」だけです。
【10】火を止め牛肉を取り出して、アルミホイルで包みます。
こうすることにより、牛肉に余熱が回り、肉汁と旨味をしっかりと閉じ込めます。
アルミホイルは、三重に包むことをおすすめします。1)1回包んだら、2)反対側から包み、3)さらにその反対側から包みます。
保温が利き、肉汁が漏れにくくなります。
ここからソースを仕上げますが、牛肉は、この状態で室温で最低30分置きましょう。冬場なら、さらに布巾やタオルで包み、しっかりと保温します。これが、余熱調理になり、肉汁が牛肉全体に周り、美味しく仕上がります。その間にソースを作ります。
翌日以降に召し上がるなど、30分以上置く場合は、粗熱が取れてから、さらにジップロックなどの保存袋に入れて、冷蔵庫で保存しましょう。肉汁が漏れることなく、4日間ほど保存することが出来ます。例えば、大晦日に作れば、三が日の間は、余裕で美味しくいただけます。
【11】ソースの野菜をざるでこします。
もし、煮詰まりすぎて水分が足りないようなら、水を45ml~50ml前後(大さじ3前後)ほど加えて、混ぜ合わせながら再度沸騰させてから、こしましょう。
こした上から、ヘラを使って、クタクタになった野菜を押して、なで付けるようにして、こしましょう。
【12】こした汁をフライパンに戻しフライパンを弱火にかけます。
せっかくの牛肉と野菜の旨味が詰まったソースです。焦げないように加熱しましょう。
【13】弱火のままヘラでかき混ぜながら、1~2分ほど熱して、ふつふつと全体が煮立ったらソースの出来上がりです。
【14】翌日以降に召し上がるなど、すぐにいただかない場合はソースは牛肉と別で保存しましょう。
ソースは、粗熱が取れてから、よく消毒した保存容器に入れて、保存しましょう。
【15】いただく際は手順10での牛肉をアルミホイルにくるんで余熱調理30分以上の後、さらにある程度粗熱が取れてから切りましょう。
余熱調理で、肉汁が全体に周り、美味しく仕上がります。また、熱い状態のうちに切ろうとすると、肉汁がかなり余分に流れ出てしまったり、うまく切れなくズタズタになったりと、かなり残念なことになってしまいます。
切る方向は、牛肉の繊維に対して直角です。
お店のような、ごく薄切りでももろちん良いですが、おうちローストビーフならではの5mm~1cm幅くらいの厚切りでも、とても贅沢に美味しいですよ。
年に一度のハレの日、おせち料理のお重には、はみ出すくらいの勢いで、贅沢にオリャーと盛り付けるといいですね。
切ったローストビーフにソースを全体にかけて、クレソンを添えて、いただきます。
ローストビーフには、ぜひ、クレソンを添えてみてくださいませ。クレソンと牛肉を一緒にお口に含んだマリアージュは、この上なく素晴らしく、ものすごく美味しさが引き立ちます!!
■牛肉の色、温度、肉汁について
ローストビーフを切ると、薄い桜色の断面が、
数分経つと、鮮やかな紅色に変わり、肉汁が出ます。
レシピ通りに作ったはずなのに、牛肉を切ったら赤い肉汁がたくさん出る……。この色は生焼けじゃないの?肉汁は血?食べて大丈夫なの?についてです。
回答は
「食べて大丈夫です。肉汁は血ではありません。」
……なのですが
でも、それだけですと、一体何が大丈夫なのかがわかりませんよね。
ですので、「温度」「赤色」「肉汁」それぞれの面から、順を追ってご説明いたします。
【焼き加減と温度】
このローストビーフのレシピは①牛肉を室温に戻す②表面を焼く③ソースで煮込む④余熱調理、としています。
このようにして、厚いかたまり肉の中心には、ゆっくりと加熱して火を通しています。
肉の中心温度は、55℃前後で加熱されることにより、焼き加減はミディアムレア~ミディアムに仕上がります。
余熱調理の際、冬場でキッチンが寒い場合は、手順10のアルミホイルで包んだあと、さらに布巾やタオルなどで包み、保温効果を高めると良いですね。
ほぼ同じ重量の牛もも肉を使って、一方はアルミホイル、一方はさらに布巾で包み、並行調理し、余熱調理を同じ時間行いましたが、右側の布巾包みが、よりミディアムな仕上がりとなっています。
でも、好みかもしれませんね。右側の布巾包みは、ちょっとメトミオクロモーゲン化してるやん、私はイマイチかなぁ……、などと思うのです。
何を言ってるのかさっぱりわからないと思いますので、順を追ってご説明します。
【食肉の赤色】
牛肉は、白身が脂肪分、赤身が筋肉ですが、その筋肉中の酸素の貯蔵・運搬の役割を担っているのが、水溶性たんぱく質のミオグロビンという成分です。
ミオグロビンは、赤色色素たんぱく質のひとつです。鉄イオンが含まれています。
生の肉の赤色は、主に、このミオグロビンが主体です。
ミオグロビンの含有量が多い食肉は、赤色が濃いです。たとえば豚肉や鶏肉は薄いピンク色で、牛肉は濃い赤色です。ちなみに、カツオの赤黒さや、マグロの赤色も、主体はミオグロビンです。
新鮮な食肉の色はミオグロビン主体なのですが、そもそもミオグロビンは暗い赤色をしています。これが、空気に触れて、鉄イオンが空気中の酸素と結合する=酸化することにより、オキシミオグロビンという鮮やかな紅色に変化します。
そして、もっと長い時間、空気に触れると、さらに酸化して、メトミオグロビンという暗い褐色になります。ローストビーフは必要な分だけ切り分けて、残りはかたまりのまま、断面はラップなどで覆って保存するのが良いのは、そのためです。
【ローストビーフの色の変化】
ローストビーフを切った直後
「ミオグロビン」=よく言えば薄いピンク色、全体的に暗い赤色
↓↓
切って数分後
断面が空気に触れて酸化し「オキシミオグロビン」に変化=鮮やかな紅色
↓↓
さらに放置すると
断面がさらに酸化し「メトミオグロビン」に変化=暗い褐色
市販のハムやソーセージには、亜硝酸塩類を添加することによって、このミオグロビンをあらかじめ化学反応(ニトロソ化)させ、色素を固定し加熱や酸化によって褐色になるのを防いでいます。このため、塩漬けの時点で桃色→加熱しても色が変わらず桃色に仕上がって製品化される、というわけです。
ところで、「焼肉」や、「すき焼き」などは、仕上がりは灰褐色ですね。これは、薄切りの牛肉に対して、短時間で加熱する調理法のためです。
この、加熱した際の変化は、メトミオクロモーゲンという状態で、色は灰褐色です。
【ローストビーフの肉汁】
牛肉を加熱すると、50℃前後で、牛肉に含まれるたんぱく質が変性して固まります。卵と同じですね。
牛肉の場合は、たんぱく質が変性すると、ざっくりと次のようなことが起こります。
弾力性を増して硬くなり、歯切れの良い食感になります。
保持していた水分が分離されます。そのとき水分と共存するうまみ成分、エキス分、脂肪も溶け出します。これらは「肉汁」と呼ばれています。
この「加熱」を、短時間で行うほど、牛肉を構成しているたんぱく質が変性し、収縮して凝固します。
つまり、牛肉は調理の際の温度変化が急激になるほど、牛肉は縮み、ぎゅっと圧迫されて固まり、水分=肉汁が逃げやすい状態となります。
牛肉の温度が低いままローストビーフ調理を開始すると、肉汁がたくさん出てしまい、余熱調理後に牛肉を落ち着かせても、行き場を失うくらいのあふれる肉汁が、ローストビーフをカットした際にドバー→先述の色変化で「血?生焼け??」ということになります。
牛肉は、室温20度前後の場合、調理開始の2~3時間前ほど前に冷蔵庫から出して、肉の芯まで温度を常温に戻しておきましょう。冬場でキッチンが寒く10度以下の場合は、20度以上の暖かい部屋に置いて戻すことをおすすめします。もし、1kg以上のかたまり肉を使われる場合は、前日から出しておくと良いでしょう。
そして、先述の灰褐色の仕上がり、メトミオクロモーゲンは、70℃前後が変性の温度タイミングとなります。
私のご紹介しているレシピは、表面を焼いた後は、ソースで煮込み、そのあと余熱調理とすることで、70℃以下を保持するようにしています。こうすることにより、きちんと火が通り、色の変化や肉汁のこぼれを最小限にして、実際にお口に含んだ時に、肉汁があふれてジューシーな食感を味わうことが出来るようにしています。
※参考文献:食肉の栄養知識
公益財団法人日本食肉消費総合センター
教えて!食肉の流通・加工(pdf)
■作り置きのコツ・ポイント
牛肉は調理開始の2~3時間前ほど前に冷蔵庫から出して、常温に置いてから調理しましょう。冷たいままですと中まで火が通りません。
牛肉に塩とこしょうを全体的にまんべんなく、よくすりこみましょう。こしょうはたっぷりめですが、臭みが消えますよ。
牛肉を焼いている間はなるべく動かさないようにしましょう。フライパンにくっついたり中までうまく火が通らなかったりします。
牛肉を焼いてからアルミホイルに包んだら、30分以上そのまま置きましょう。余熱調理で肉汁が全体に周り、美味しく仕上がります。
保存容器は、充分に消毒してから使用しましょう。
■アレンジのヒント
ここからいくつかアレンジを書きますが、私は、クレソンと一緒にいただくのが一番好きです。クレソンって一見、飾りのようですが、ぜひ、ローストビーフと一緒にお口に含んでくださいませ。素晴らしいマリアージュです。何倍も何十倍も何百倍も美味しさが引き立ちます!
あとは、グリーンリーフやベビーリーフなどをたっぷり敷いた上にどーんと盛り付け、オニオンスライスを乗せたりして、ソースをかけ、サラダのように、野菜と一緒にいただくのが好きです。もちろん、先述のようにクレソンがあると、さらに美味しさが増します。
サンドイッチにもどうぞ。サンドイッチ用のパン、もしくは薄切りの全粒粉パンやバンズなど、やわらかめのパンに、ローストビーフとクレソンを、挟むのはもちろん、包んで、くるっと巻くと良いです。マスタードも良く合いますよ。
贅沢な丼も出来ます。あつあつの白いご飯にソースもしくはだししょうゆをかけ、ローストビーフをガンガン乗っけて、クレソンもしくは、玉ねぎの薄切りか白髪ねぎ、そしてお好みでわさびを少しあしらってくださいませ。カロリーは無視で。
私は酒飲みなので苦手ですが、すし飯と合うそうです(@うちの子)。手巻き寿司の具にしたり、小さく握ったすし飯に乗せ、わさびを乗せると、たまらなく美味しいそうです。手巻き寿司をやった際、冷蔵庫から出してきて、うちの子が悶絶していました。
細かく切って、レタスと共に炒飯の具に使うと、とんでもなく美味しいです。とても贅沢ですが、どうにも余った際にどうぞ。
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