パン屋さんでよく見かけるようになった「天然酵母」のパン。健康的なイメージがありますが、イーストを使った普通のパンとはいったいどのような違いがあるのでしょうか?この記事ではそもそも酵母とはなにかに加え、天然酵母パンの味わいや特徴、イーストを使ったパンとの違いなどについて解説します。ぜひご覧くださいね。
天然酵母パンとは?特徴や普通のパンとの違いについても解説!
- 目次
- 酵母とは?
- 天然酵母パンの特徴は?
- イーストパンとの違い
- 奥深い味わいが魅力!天然酵母パンづくりに挑戦しよう!
酵母とは?
酵母とはカビやきのこと同じ真菌類で、卵形や球形の単細胞生物のこと。目には見えませんが、実は自然界のさまざまな場所に生息しており、土や水、空気中などに生息しているんです。野菜や果物といった植物の表面、動物の皮膚や消化器官の中などにも幅広く見つけることができます。
自然界には数百種類もの酵母菌が存在しており、ビール酵母や清酒酵母など、実にさまざまな種類があります。そのほかにも、紅茶や味噌、しょうゆやヨーグルト、納豆など日常的に食べられているさまざまな食品の発酵の際にも酵母が活躍しているんですよ。たくさんの種類がある酵母は、用途に合わせて使い分けられています。例えば、パンの材料にパン酵母を加えて発酵させるとパンができ、ぶどうの果汁にワイン酵母を加えてアルコール発酵させるとワインが作れるといった具合です。
このように、酵母は私たちにとってとても身近な存在だということがわかりますね。
天然酵母パンの特徴は?
酵母や発酵のポイントがわかったところで、ここからは天然酵母パンについて見ていきましょう。一般的に天然酵母とは、自然界にあるさまざまな酵母菌のことを指しますが、実ははっきりとした定義はありません。実はイーストも翻訳すると「酵母」となり、自然界にあるさまざまな酵母菌のひとつなのです。パン酵母の場合は古代からパン作りに使われていた従来の天然酵母とイーストとを区別するためにあえて「天然」という言葉を使って表現されています。
天然酵母は穀物や果実などについている酵母から作られており、添加物を使っていないのが特徴です。パン作りに適した酵母以外にも、乳酸菌や酢酸菌などたくさんの酵母が混ざり合っています。この点も一般的なイーストとは違うポイントなんですよ。
天然酵母は大きく分けると市販のものと自家製タイプがあります。市販の天然酵母はさまざまなメーカーが販売しており、専門店や通販などで購入することが可能です。それぞれのメーカーごとに風味が異なり、日本酒にも似た深みのある香りや、味噌のような特有の風味のパンに仕上がるなどと言われています。天然酵母パンを販売しているパン屋さんでも、こうした市販の酵母を使用しているお店が多いんですよ。
一方の自家製タイプは、レーズンやリンゴなどの果実や穀物を使って一から酵母を培養するタイプです。「自家製酵母パン」と名乗っているお店の多くは市販のものを使わずに、自分のお店で酵母を一から育てているということになります。自家製酵母パンを作るのは大変手間がかかるので、こだわりを持ってパン作りをしているパン屋さんが多いようです。ちなみに、自家製酵母は家庭でも作ることができますが、手間がかかるうえに安定して作るのはなかなか難しく、かなりの知識や経験が必要となります。
前述の通り、天然酵母のパンは発酵する力を強める添加物が入っていないので、もっちりと噛みごたえのある特有の食感になるのが特徴です。また、酵母の香りや小麦そのものの甘みなど、奥深い味わいと豊かな旨味を感じられます。噛めば噛むほど味が出るのも天然酵母ならではの特徴で、食材のおいしさを堪能できるのが魅力です。天然酵母の種類ごとに違う香りや風味があり、酸味や甘みが強いものなどさまざまなバリエーションを楽しめます。
イーストパンとの違い
イーストとは、パン作りに適した酵母を人工的に集めて育てた酵母のことです。もとになっている酵母は自然界に存在する天然の酵母ですが、その中でも発酵力が高いものを選んでいます。また、酵母の発酵力や安定性を添加物によって人工的に高めているのが特徴です。発酵力や安定性に特化しているため、工場などでパンを大量生産する際にもたいへん適しています。膨らむ力が非常に高く発酵の時間が圧倒的に短くてすむので、家庭でパンを焼く際にも便利です。それに加えて発酵力も安定しているので、むらなく膨らみやすく失敗も少ないとされます。パン作りの初心者の方や時短でパンを作りたい方にはイーストパンがおすすめです。
イーストにもさまざまなタイプがあり、予備発酵の必要がなく扱いやすいのが特徴のインスタントドライイーストや培養したパン酵母そのままの生イースト、その中間の特徴を持つセミドライイーストなどがあります。インスタントドライイーストは手軽ですが、特有のイースト臭が強く感じられ好みが分かれがちです。
イーストを使ったパンと天然酵母のパンでは食感や味わいなどが異なります。イーストを使ったパンは発酵する力が強いため、よく膨らみふんわりとやわらかいのが特徴です。スーパーなどで売っているパンのようなふわふわとした食べやすい食感に仕上がります。
一方、天然酵母パンはもちもちとした食べごたえのある食感です。どっしりとしたハード系のパンなどによく合います。手に入りやすく、天然酵母より手軽に使用できるのがイーストのメリットですが、単一酵母であることや添加物を加えている分、酵母特有の味や香りは弱まってしまいます。天然酵母パンはじっくり発酵する過程でさまざまな菌が作用するため、味や香りに深みが生まれると言われているんですよ。酸味が強いものや甘みが強いものなど酵母の種類によって違う味わいが楽しめるのも天然酵母パンならではの魅力。それと比べるとイーストのパンは安定しておいしいですが、どこか画一的な味わいになってしまいます。
小麦の香りや旨味など素材のおいしさをダイレクトに味わいたい方や、酵母ごとのさまざまな風味を楽しみたいなら天然酵母パンがおすすめです。
イーストパンは焼き立てが一番おいしいものです。時間が経てば経つほど乾燥が進み風味や旨味が落ちてしまいますよね。それに対し、天然酵母パンは時間が経過してもおいしく食べられると言われています。焼き立てよりもかえって次の日のほうがしっとりとしておいしいと言う人もいるんですよ。
奥深い味わいが魅力!天然酵母パンづくりに挑戦しよう!
いかがでしたか?酵母や発酵の意味に加え、天然酵母パンの特徴や味わい、イーストを使ったパンとの違いなどをご紹介しました。天然酵母のパンを作るには多少手間と時間がかかりますが、イーストのパンとはひと味違う複雑なおいしさを味わうことができます。今までイーストを使ったパン以外作ったことがなかったという方も、この機会にぜひ天然酵母のパン作りに挑戦してみてくださいね。