秋の風物詩ともいえる「土瓶蒸し」。松茸が香る上品な味わいは、日本料理の奥深さを改めて感じさせるおいしさですよね。しかし、懐石料理で土瓶蒸しが出てくると、食べ方が分からず困ってしまう方も多いかもしれません。そこで今回は、土瓶蒸しの特徴をはじめ、その歴史や作り方、正しい食べ方についてご紹介します。
土瓶蒸しってどういう料理?歴史や正しい食べ方について解説!
- 目次
- 土瓶蒸しとは?
- 土瓶蒸しの歴史は謎が多い?
- 土瓶蒸しの作り方は?
- 土瓶蒸しの作り方とは?最初のダシが大事
- 土瓶は土鍋で代用
- 一番だしで香り高く
- 具材は数種類を組み合わせる
- 具材は鮮度が大切
土瓶蒸しとは?
「土瓶蒸し」とは、その名の通り土瓶を器にして作る蒸し物のこと。土瓶に一番だしを注ぎ、松茸やハモ、三つ葉などの具材を加えて蒸し上げる、風味豊かで上品な味わいが魅力の料理です。懐石料理では秋の風物詩として、お椀料理(吸い物)代わりに提供されることが多いです。
土瓶蒸しの醍醐味といえば、そのだしのおいしさ。松茸など風味のよい具材を土瓶で蒸し煮にすると、その旨味や風味がだしに溶け出してとても上品で味わい深いスープになります。だしを猪口に注いでいただけば、その繊細な味わいに驚くこと間違いありませんよ!
土瓶蒸しの歴史は謎が多い?
実は、土瓶蒸しの歴史は謎が多く、なぜ器に土瓶が使われるようになったのか、詳しいことは定かではありません。その発祥は諸説ありますが、松茸の産地である兵庫県・丹波篠山の郷土料理だったと言われています。代表的な説を、ふたつご紹介しましょう。
◾️農夫が山で採った食材を食べようとしたとき、鍋がないことに気づいて土瓶で代用したのが始まりだという説です。ちなみに特別な日の人気メニューにすき焼きがありますが、この料理名も「鋤(すき)」という農具を鉄板代わりにして肉や魚を焼いた関西の料理が由来とされているんですよ。
◾️料理人が山に松茸を仕入れに行ったときに、農家でごちそうになった鍋料理が発祥という説です。鍋に松茸や地鶏、野菜などを入れて、囲炉でコトコトと炊いた素朴な料理を懐石料理のひと品としてアレンジしたものが、土瓶蒸しになったと言われています。
土瓶蒸しの作り方は?
土瓶蒸しの作り方は、一番だしに具材を加えて蒸し煮にするだけと、とてもシンプルです。ここからは、松茸を使った土瓶蒸しの作り方と、おいしく仕上げるためのポイントをご紹介します。
土瓶蒸しの作り方とは?最初のダシが大事
まずは、昆布とかつお節で和風一番だしを取り、塩と薄口しょうゆ、料理酒で味を調えます。次に、土瓶に松茸と一番だしを入れ、蓋をして中火にかけ、沸騰したら白身魚やエビを加えます。具材に火が通ったら三つ葉を加えて蓋をし、猪口とスダチを添えてできあがりです!
土瓶は土鍋で代用
ご家庭で土瓶蒸しを作る場合は、小ぶりの土鍋で代用することもできます。注ぎ口からだしを注ぐことはできませんが、十分なおいしさに仕上げることができますよ。
一番だしで香り高く
土瓶蒸しの醍醐味といえば、やはりだしのおいしさです。顆粒和風だしで作ることもできますが、香り高い一番だしを使うとワンランク上のおいしさに仕上げることができますよ。
具材は数種類を組み合わせる
土瓶蒸しの具材は松茸とハモ、三つ葉が定番ですが、ほかのきのこや白身魚、エビ、鶏肉、ぎんなんなどで作ることもできます。きのこや三つ葉のように風味がよいものと、白身魚やエビのように旨味が強いものを組み合わせると、香り高く奥深い味わいに仕上げることができますよ。
具材は鮮度が大切
土瓶蒸しの具材は、必ず新鮮なものを選ぶことも大切です。特に、松茸などのきのこは新鮮なものを選ぶと、芳醇な風味がグンと引き立ちますよ!
土瓶蒸しの正しい食べ方と順番は?
懐石料理で土瓶蒸しが出てきたら、食べ方が分からずに困ってしまうこともありますよね。ここからは、土瓶蒸しの正しい食べ方や順番をご紹介します。ぜひ参考にして、そのおいしさを堪能してみてくださいね!
1.お猪口にだしを注ぐ
土瓶蒸しが運ばれてきたら、いきなり蓋を開けてはいけません。まずは、お猪口にだしを注ぎ、鼻を近づけて芳醇な香りを楽しみましょう。
2.だしをいただく
次に、お猪口に口をつけてだしをいただきます。最初はスダチを絞らずに、だし本来の風味を楽しみましょう。2〜3杯味わったら、土瓶の蓋を開けて改めて香りを楽しみます。湯気と一緒に、松茸の芳醇な香りがふんわりと広がりますよ。
3.スダチを絞る
土瓶の中にスダチを軽く搾り、もう一度だしを味わって味の変化を楽しみましょう。土瓶の中にだしの風味を残しておきたい方は、お猪口にスダチを搾ってもよいでしょう。また、スダチを搾る際は、果汁が飛ばないように手を添えるのがマナーです。
4.具材をいただく
ここでいよいよ、具材をお猪口に取っていただきます。食べる順番に決まりはありませんが、まずは主役の松茸とハモからいただくのが好ましいようです。お猪口にのせた具材にスダチを搾って、さっぱりとした風味を楽しむのもおすすめですよ。
5.蓋を元に戻す
具材とだしを交互に食べ終わったら、土瓶の蓋を元の状態に戻します。スダチの皮は、蓋の上にのせておくと見た目もきれいですよ。
秋の味覚!土瓶蒸しのおいしさを堪能しよう!
今回は、土瓶蒸しの特徴をはじめ、その歴史や作り方、正しい食べ方についてご紹介しました。土瓶蒸しとは、土瓶を器にした蒸し物のことで、松茸やハモなど秋の味覚を使った繊細な風味が魅力です。普段口にする機会は少ないかもしれませんが、ぜひ食べ方のポイントを押さえて、和食ならではの上品な風味を堪能してみてくださいね。