■保存期間
常温半年~
■紹介文
今回は、梅干しの作り方をご紹介します。
2015年は東京で初めての夏を迎えたこともあり、東京の自宅でいただくための梅干しを作りました。
単身赴任のワンルーム住まいなので、もちろん家もベランダも狭いのですが、昔ながらの丁寧な王道の作り方で、素晴らしい梅干しが出来上がりました。
長年作ってきた失敗&成功の経験や、狭いなりの工夫を交えてご説明いたします。時々写真が狭苦しいスペースになっていますので、ご容赦いただければと思います。
■材料(梅2kg分)
完熟梅(2~3L) 2kg
粗塩 300g
ホワイトリカー(35度) 50ml
■道具
ホウロウ容器(7L) 1つ
押しぶた(直径18cm) 1枚
重石(2~2.5kg) 2個
紙袋(なければビニール袋) 1つ
洗い桶(なければ大きめ(5L程度)の鍋) 1つ
竹串 1本
大きめの盆ざる(直径30cm以上) 1~2枚
清潔なタオル 1~2枚
使い捨て手袋 1組
消毒用アルコール(またはホワイトリカー)&キッチンペーパー 適量
【1】梅の下ごしらえをします。洗い桶、または大きめの鍋に、たっぷりの水を入れ、梅を静かに入れます。
【2】実を傷つけないように、梅のヘタを取ります。
両手でしっかり行いましょう。
【3】やさしくこすり洗いをして、梅の表面の産毛を取ります。
両手でやさしく包むように洗います。決してゴシゴシ洗わないようにしましょう。
【4】ざるにあけて、水気をよく切ります。
【5】さらに、清潔なタオルで、梅の水気を丁寧にふき取ります。水気はカビの原因になりますので、しっかりとふき取りましょう。
【6】粗塩の分量を量っておきます。
【7】ホウロウ容器の内側を、アルコールで消毒します。
アルコール消毒は、ホワイトリカーをスプレー容器に入れて吹き付けて使っても構いません。
【8】梅を漬け込んでいきます。ここからは、使い捨て手袋を手にはめて、梅を扱いましょう。
【9】だいたいで構いませんので、粗塩の1/3量を入れ、その上に梅の1/2量を置いて、粗塩の1/3量、梅の1/2量、残りの粗塩を乗せて、その上からホワイトリカーを全体に回しかけます。
【10】ホウロウ容器を上下にゆすって、梅全体に粗塩をできるだけまんべんなく行き渡らせます。
だいたいでOKです。それよりも大切なのは、手でわしわし混ぜるのは絶対にやめましょう。梅の実に傷が付いてしまいます。梅干しを作る工程の「梅に傷」は、カビの元=失敗の元です。
ですので、容器をゆすって、粗塩を全体に行き渡らせます。そして、梅を平らにならしていきましょう。
【11】ホウロウ容器を上下にゆすって、梅が平らになったら、アルコールで消毒した押しぶたを乗せて、3~5日ほど保存できる場所へ静かに運び、静かに置きます。重石を2つとも上からのせます。
重石は、いずれもアルコールで消毒しておきましょう。
【12】紙袋、またはビニール袋をかぶせます。朝晩1日2回、紙袋、重石、押しぶたを外し、容器を上下にゆすります。
【13】3~5日経つと、漬け汁(白梅酢)が梅の実ひたひたの量(漬け汁から梅の実が少し頭を出す程度)に上がります。これで、下漬けは完了です。
【本漬け(赤じそ漬け)】
■材料(梅2kg分)
赤じそ 1束(葉だけを使います。正味約200g)
粗塩 大さじ2
■道具
大きめのボウル(直径23cm以上) 1個
ざる(直径23cm以上) 1枚
平皿(直径20cm程度) 1枚
重石(2~2.5kg) 1個
菜箸 1膳
使い捨て手袋 1組
消毒用アルコール(またはホワイトリカー)&キッチンペーパー 適量
■作り方
【1】赤じその葉を指でつまむようにして、1枚ずつ摘み取っていきます。
【2】摘み取った葉はボウルにたっぷりの水を入れた中に漬け、水を2~3回替えて、軽く押すようにして、ふり洗いをします。
【3】ざるにあけて水気を切ります。
【4】ボウルに水気を切った赤じそ、塩大さじ1を入れます。
【5】使い捨て手袋をはめた両手で、揉んだり押さえつけながら、しっかりとアクを出します。このとき赤じそがちぎれないようにしましょう。
【6】ぎゅっと絞り、泡だらけの濃い紫~黒色のアクの水分を捨てます。
【7】アクの水分を捨てたら一度ボウルを洗い、赤じそ、塩大さじ1を入れます。
【8】赤じそをほぐしながら、押すように全体を揉んで、さらにアクを出します。
アクは、1回目より泡が少なめ、鮮やかな紫色になっていきます。
【9】「これ以上無理、もう絞れない」というくらい、全力で絞ります。これで、アク出しは完了です。
【10】下漬けした梅の上に、アク出しした赤じそをのせます。
【11】赤じそで表面全体を覆うように、菜箸で全体に広げましょう。
【12】梅雨明けまで保存できる場所へ静かに運び、静かに置きます。そして、アルコールで消毒した平皿をのせて、再びアルコール消毒をした重石を1つのせます。
【13】中ぶたをして、容器のふたをして、約1か月ほど、梅雨明けまで保存します。
【14】長期間の保存ですので、念のため2~3日に1度、中身の様子を見てみましょう。万一、カビが生えていたら、スプーンなどですくい取り、捨てましょう。
もし、うっすらと表面が白くなっていたら、それはカビです。しっかりと取り除き、焼酎を霧吹きで全体にふりかけましょう。
【土用干し】
■道具(梅2kg分)
盆ざる(直径30cm) 3枚
(ベランダが狭い場合)ドライネット 1つ
菜箸 1膳
へら または しゃもじ 1つ
約2Lの保存容器 1個
消毒用アルコール(またはホワイトリカー)&キッチンペーパー 適量
■手順
【1】梅雨が明けて、晴天が3日以上続くようになったら、土用干しをします。
本漬けをしてから1か月ほど経っていますので、梅はすっかりと鮮やかな赤色に染まっています。
【2】アルコールで消毒した盆ざるの上に、梅を1粒ずつ並べていきます。
あとで赤じそを置きますので、中央は空けておきます。
今回は菜箸を使っていますが、手にビニール手袋をはめて、手で作業しても良いですよ。
【3】中央に赤じそを置いて、へらで赤じそを押すようにして、梅酢をよく切りましょう。
今回はへらを使っていますが、手にビニール手袋をはめて、手でぎゅっと絞っても良いですよ。
また、赤じそは、厳密に全部すくい取らなくても良いですよ。梅酢の中に少し残った状態でも構いません。
土用干しの最終日には、梅酢を容器ごと天日干しにしますので、少し残った赤じそは、その段階で殺菌します。
【4】ドアノブなど、低めの安定したところにドライネットをつるして、盆ざるを静かに並べます。
【5】ファスナーを閉めます。
【6】ベランダに3日間干します。その際、次のことを守りましょう。
【7】途中で梅の上下を返しましょう。
【8】盆ざるの上中下の位置を、1日ずつ入れ替えましょう。
カビの元となりますので、雨に濡らさないようにしましょう。
もし夕立やゲリラ豪雨など、雨に遭ったら、次のように対応しましょう。
・盆ざるは洗って天日乾燥させます。
・梅は、雨水を丁寧にふき取ってから、全体にホワイトリカーをスプレーします。再度、梅酢にくぐらせて、干し直します。
【9】梅がしわしわになって乾いたら、土用干しの完了です。
【約2Lの保存容器で保存する際】
■手順
【1】土用干しの最終日には、梅酢を容器ごと天日干しにします。
【2】保存容器をアルコールで消毒します。
【3】消毒は、容器の中だけでなく、ふたもしっかりと消毒しましょう。
【4】土用干しをした梅、赤じそを保存容器に入れます。
【5】梅酢を注ぎ、しっかりと密封し、冷暗所に保存します。
この時点でもいただけますが、半年ほど経つと、味がなじんでまろやかになり、さらに美味しくいただけます。
【6】2~3年間は、味がさらにまろやかになっていき、色合いも変わらず、とても深みのある味わいと香りで、美味しくいただけますよ。
って、昨年漬けた梅干しが、もうあんまりあれへんですね……(ノ∀`)
■作り置きのコツ・ポイント
こちらでは、「用意するもの」について説明します。
【完熟梅】
種類は:おすすめは、和歌山の「南高梅」です。
アク抜き(半日ほど水に漬ける)をしなくても良いこと、そして肉厚、また、種離れが良いので食べやすいためです。
なぜ完熟梅を使うの?:私が若い頃に失敗した例も混じっており恐縮ですが、以下のような理由です。
「皮が薄く、柔らかく仕上がる」=食べやすく仕上がります。ちなみにカリカリ梅には小さい青梅が適しています。青梅で、うっかり「デカいカリカリ梅」を大量に作ってしまったことがあります。いや、まぁ、おいしかったですけどね……。コレジャナイ感が、すごかったです。
「梅酢が上がりやすいこと」=塩分控えめでも失敗しにくいです。
「流通している、黄色~赤色に完熟した柔らかい梅を使うこと」=青い部分が残る梅を室内で追熟させても、樹で熟したものとは違うこと、追熟の間にカビらせる恐れがあるためです。はい、うっかりほとんどカビさせたことがあります……。追熟させる場合は、包装のビニールを外し、新聞紙をひいた平ザルの上に梅が重ならないように広げ、冷暗所(冷蔵庫である必要はありません。涼しく日が当たらない場所)に置きましょう。熟したぶどうや、いちごのようにデリケートです。
自然落下した完熟梅が一番適している、と聞きます。その通りやと思います。また、熟して自然落下するので、ヘタもないらしいです。
せやけど超~~~高価なこと、かつ、天候により、そもそも入手できない年もあるため、一度も入手したことがありません。
【粗塩】
なぜ粗塩?:粗塩は、塩の粒が粗いので、実と一緒に漬け込んだ際に、下へ落ちにくいのです。
このおかげで、しっかりと梅の実それぞれへのフタの役割が出来るため、梅酢が上がりやすいのです。
私のお気に入り、赤穂の天塩です。以前、スーパーで特価していたのでたまたま購入し、おにぎりや焼き魚に使ってみると、後味で甘み・旨味があり、それ以来ファンになり、あらゆる料理に使っています。特に、味付けがシンプルな料理に使う際には、とても頼りになります。
粗塩の量はなぜ300g?:梅の量に対して15%(2kgなら2000g×0.15=300g、3kgなら3000g×0.15=450g)が、えぇ感じで仕上がる塩加減、つまり「いい塩梅」やと思います。「減塩にしたい」「そんなもんだと梅酢が上がらない」「塩吹くくらい塩辛いのが好き」という方は、13~20%くらいならお好みでえぇと思いますよ。実際、多く出回っているレシピは、18%くらい(2kgなら360g)が多いんやないでしょうか。
【ホワイトリカー(35度)50ml】
ホワイトリカー(35度)50mlは必要なの?:殺菌のために使います。
本来は、ホワイトリカーをスプレー容器に入れ、梅の実一つひとつに吹きかけて消毒するために使います。
私はそれが面倒なので、「これ、どばっと全体に掛けても、おんなじちゃうの?」→「仕上がり・品質に変化なし」やったため、ホワイトリカーを「どばっと50ml」使用しています。
使い残したホウイトリカーは、アルコール度数が高い蒸留酒ですので、保管状態さえ良ければ長期間経過しても、ほとんど中味に変化はありません。とはいえ、アルコールの揮発、臭いの吸着等がある、といわれていますので、早めに使うにこしたことはないです。私の経験則で恐縮ですが、開栓→3年後頃までに梅干しに使用または果実酒として漬ける、でおいしくいただけました。
【ホウロウ容器、押しぶた、重石】
なぜホウロウ容器?なぜ7L?:梅干しは、酸と塩分を扱いますので、酸と塩分、そしてアルカリにも強く腐食しにくく、光を遮り、臭いが移りにくいホウロウ、もしくはガラス容器を使用します。ホウロウ容器の中にキズがある場合は、使うのを避けましょう。酸化して変質します。
一番経済的なのは、大量味付け海苔のガラス瓶なんですが、近年、海苔は瓶やなくてプラスチックになりましたね……。
「押しぶた」って必要?:下漬けの際、重石を乗せる前に、アルコールスプレーで消毒したものを乗せます。
重石の力がまんべんなく均等に梅の実に行き渡るため、梅の実を保護し、きれいに梅酢が上がります。
下漬けの際、押しぶた&重石を乗せること、梅酢(白梅酢)をしっかり上げることから、かさが増えるため、容器は少し大きめです。
21cmサイズ(7L)で梅2~3kg相当、24cmサイズ(10L)で約5kgが目安です。初めての方や、1~2人暮らし、+小さいお子さんのご家庭で漬けやすい・食べやすいのは、2kgやと思います。
重石は4~5kg×1個じゃだめなの?:重石は、短時間でしっかり漬けて梅酢を上げる下漬けでは2~2.5kg×2個、長期間ゆっくり漬ける本漬けでは2~2.5kg×1個のみを使うため、ひとつずつを用意しておくのがベストです。
梅の実の重さ×2倍の重さが下漬け、梅の実と同じ重さが本漬け、これが重石の重さの目安です。きれいに梅酢が上がりますよ。
ペットボトルに水を入れて、しっかりと栓をしたものでも代用できないことはないです。ただ、漏れるなどの事故で失敗すると目も当てられませんで、その点は充分にご留意くださいませ。
【赤じそ】
どんなものを使うのが良いの?:葉の表、裏面とも赤いものを選びましょう。
葉のギザギザが少なく、裏面が緑色のものは不向きです。
茎付きの場合、写真のように、約90cm幅ほどの板の間が埋まってしまうほどのカサがあります。
【盆ざる(直径30cm)×3枚】
おうちが広い場合は、直径50~60cm程度のざるが1枚あればOKです。
「そんな大きなサイズを広げる・しまう場所がない」という場合は、直径30cmの盆ざるを3枚用意しましょう。
次項でご紹介するハンギングドライネットと組み合わせて、梅干し2kgをちょうど干すことが出来ます。
盆ざるは持っておくと、野菜をゆでて冷ましたり水気を切ったりする際や、おもてなし用のざるそばやそうめんを盛ったりと、調理でも食卓でも大活躍しますよ。
【ドライネット】
おうちが広い場合は必要ありません。
前項でご紹介した直径30cmの盆ざるが、ちょうど3枚入ります。
この盆ざる+ドライネットの組み合わせは、梅干し以外でも、大根やにんじんなどの干し野菜を作ったりと、大活躍しています。
【約2Lの保存容器】
漬け込みの際に使用したホウロウ容器のまま保存しても良いのですが、長期間保存となるとかなり大きく場所を取ることから、出来上がった梅干しは2L程度のコンパクトな容器に入れ替えると良いです。
材質は、ホウロウかガラスが最適です。一番経済的なのは、インスタントコーヒーの空き瓶です。でも、インスタントコーヒーを飲まないご家庭は、ホウロウかガラス、かめなどのコンパクトな容器を用意しておくと良いです。
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